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サブプロジェクト

 現在の動物性タンパク質生産は海洋の天然資源(魚粉)に依存しているため、気候変動や人口増加に脆弱であり、人類の宇宙進出にも適合しません。そのため、魚粉を代替し、持続可能な未利用資源の確保が急務となっています。そこで本プロジェクトでは、農作物残渣・食品廃棄物を有用動物性タンパク質に転換できる昆虫を、魚粉を代替する水産・畜産飼料原料として確立すると共に、人類の食・健康と地球環境を支える新たな生物資源として活用することを目指しています。さらに、地球上のいかなる環境にも対応可能な昆虫生産システムを開発し、宇宙空間における人類の安全・安心な食と健康を支える完全循環型の食料生産システムに昇華させます。
 本プロジェクトでは6つのサブプロジェクトを設定し、互いに相補的・相乗的な研究開発を実施することで、目的の確実な達成を実現します。まず、全てのサブプロジェクトの基盤となるコオロギ・ミズアブにおいて、付加価値や生産性を高めるための「ゲノム育種」を実施します(サブプロジェクト1)。こうして作出された昆虫を利用して、農作物残渣・食品廃棄物を家畜・養魚・ヒト向けのタンパク質源に転換するプラットフォームを構築します(サブプロジェクト2、3、4)。そして、このプラットフォームを極限環境や宇宙空間においても対応可能にします(サブプロジェクト5)。これら全てのサブプロジェクトは、アウトリーチ活動やベンチャー創出等の「社会実装」に向けた支援を受けます(サブプロジェクト6)。以上6つのサブプロジェクトは同時並行で実施され、近未来に迫る地球規模の食料問題の解決に向けた「昆虫利用型食料生産」の普及や発展に貢献します。

サブプロジェクト1:
昆虫ゲノム育種

大きく、早く育ち、近親交配・共食い・病気による減産が少なく、安全かつ栄養に優れたコオロギ・ミズアブの作出を目指します。人類の歴史の中で家畜として確立された代表的な昆虫は、カイコとミツバチのみであり、本プロジェクトではゲノム育種によって、新たにコオロギ・ミズアブの家畜化の実現を提案します。また、コオロギ・ミズアブの遺伝情報や表現型、栄養価などのデータベースを統合・整理することで、家畜化昆虫生産の産業化を促進します。

サブプロジェクト2:
環境保全型昆虫生産システム開発

“One Health”の概念に基づき動物・植物・環境の健康を保ちながら、安全かつ安心な食の供給を可能にする、植物・コオロギハイブリッド型食料生産システムの構築を目指します。そのために本プロジェクトでは、可搬性を有し、省エネルギーな食料生産システムや、フルオートメーション化に必要なセンサおよびアクチュエータ等の材料開発を実施します。また、畜産等の餌と競合せず、農作物残渣あるいは食品残渣由来のコオロギ用エコフィードを開発します。

サブプロジェクト3:
昆虫由来水産・畜産飼料開発

高品質のコオロギ・ミズアブを安全かつ安価な魚粉代替飼料として活用することを目指します。そのために本プロジェクトでは、コオロギ・ミズアブの高度な加工技術、特に栄養成分や機能性成分の損失を防ぐ加工技術を開発します。さらに、海産魚の昆虫タンパク質の消化メカニズムの解明を通じて、最適な配合飼料の設計を図ります。同時に、養殖場の底質環境のリアルタイムモニタリングを通じて、底質汚染を未然に防止する技術も開発します。

サブプロジェクト4:
コオロギ由来食料開発

安全・高機能食材としてコオロギを活用することを目指します。そのために本プロジェクトでは、コオロギの安全性の評価と、栄養学的な機能性の検証、さらには安全性を担保しつつ機能性を付与する食品加工技術に関する研究開発を実施します。例えば、アレルゲン物質の解析やゲノム編集技術を用いた低アレルゲン型コオロギの作出を実施します。また、高齢者や消化器系疾患を抱える患者の健康をも支える機能性食材の開発も実施します。

サブプロジェクト5:
宇宙進出要素技術開発

人類の宇宙進出を支える食料生産システムに必要な要素技術の開発を目指します。そのために本プロジェクトでは、無重力・宇宙線・低酸素等の極限環境に耐性のあるコオロギ・ミズアブの品種を作出します。さらに、省エネルギー情報通信デバイスやIoTのソフトウェア開発、先端人工知能技術と高いサイバーセキュリティ機能を有した生産・加工のフルオートメーション化に関する研究開発も同時に進めることで、フルオートメーション宇宙型エコファームを開発します。

サブプロジェクト6:
社会実装

昆虫を利用した食産業を社会に定着させるためのソーシャルイノベーションを創出することを目指します。そのために本プロジェクトでは、新興分野における研究成果の適切な情報発信やアウトリーチ活動を実施します。さらに、海外展開を見据えて、研究シーズに基づいたベンチャー創出・海外展開を積極的に実施する体制を構築します。また、次世代を担う人材の育成および新産業の創成という観点から、ベンチャー創出に向けた支援も同時に実施します。